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誘発地震と火山噴火に関する考え方とは? [火山噴火]

大地震の発生の影響により、震源地から離れた場所でも地震活動が高まることが有る。



大地震の後には余震が多数発生する事が分かっていますが、この余震は地震を起こした断層面の「ずれ動きが残った場所」が後から壊れたり、ずれ動きにより新たな歪みが溜まった場所で歪みを開放する動きによるものです。

最大余震の規模は、本震より1程度小さいものが多いのですが、余震の震源が近い場合にはたとえ本震より規模が小さくても、大きな被害が起きる恐れが有ります。


余震が多発する間は、複数の地震の観測データをご判定する恐れが高く、緊急地震速報の震源決定制度が低下して誤報や見逃しが起きやすくなることにも注意が必要なのです。

大地震の発生の影響によって、震源域から離れた場所でも地震活動が高まることが有ります。


2011年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の翌日(3月12日)には、長野県栄村でM6.7の地震が発生死者3人、住宅全半壊334棟を含む大きな被害が出ました。


地震と火山活動.jpg


3月15日には富士山の直下を震源とするM6.4の地震が発生、富士宮市で震度6強の強い揺れを観測しています。


さらに3月23日~4月12日にかけて福島県浜通りでM6.0~M7.0の地震が相次いで発生しましたが、これらの内陸地震は、東北太平洋沖地震により陸のプレートが大きく引き延ばされた結果、地殻の応力状態が大きく変化して引き起こされた「誘発地震」であり、これも広義の余震と考える事もが出来ます。

大地震の発生から数年を経て起きる誘発地震もありますが、こうした内陸地震は大地震の影響が数年かけて内陸に広がり、地殻内に生じたバランスの崩れを解消するために起きるのではと考える事も出来ます。


大地震の発生はしばしば火山活動にも影響を与えており、東北太平洋沖地震の発生直後に東北から関東にある13の火山の周辺で地震活動が一時期活発化しました、これも、地震により地殻内部の応力変化が生じた為で有ると見られています。







プレート境界地震に伴うアウターライズ地震とは

海溝外縁隆起帯(海溝軸より海寄りの海洋プレートが地形的に隆起した領域)で生じる地震を「アウターライズ地震」と呼びます。

海洋プレートが陸側プレートの沈み込む海溝の手前のアウターライズ付近では、プレートを下向きに折り曲げる力が働くため、プレートの浅い部分で伸張(引っ張り)応力が、深い分では圧縮応力が作用してプレート内に断層破裂が起こる事で大地震が発生すると云うものです。


アウターライズ地震.jpg


アウターライズ地震は陸地から遠く離れた場所で発生するため、陸地での揺れは比較的小さいものですが、震源が浅いために大きな海底隆起を生じ、地震の規模以上に大きな津波を起こしやすいのです。

アウターライズ地震は、プレート境界型地震の影響を受け引き起こされることが多くみられ、将来、より規模の大きなアウターライズ地震の発生が懸念されています。



大規模災害発生が想定される地震の被害想定

今後30年以内の発生確率が高く、被害が広範囲にわたるとともに、日本全体への社会的影響が大きい南海トラフ地震(東海・東南海・南海地震)と、首都直下地震については、国の中央防災会議によって、被害想定が行われています。

これを受けて自治体では、詳細な地盤データや海岸地形データを用いて震度分布や津波の浸水域を評価すると共に、町丁目ごとの人口や建物データと合わせて、死者数や建物倒壊棟数などの詳細な被害想定が進められているのです。







南海トラフ地震とは

駿河湾から足摺岬の沖合に広がる南海トラフでは、過去に100~150年周期でマグニチュード8.0~8.7規模の東海・東南海・南海地震が繰り返し起きています。

南海トラフ地震の発生パターンは毎回大きく異なり、東海・東南海・南海地震が同時に発生した「三連動」の場合も有れば、数年の時間差で順々に発生した場合も有りました。


1707年放映自身は三連続地震と考えられていますし、1854年の安政地震では東海地震と東南海地震が先行、それから30時間遅れて南海地震が起きています。

昭和の地震では1944年に東南海地震が発生、2年後に南海地震が起きましたが、以後70年を経過した現在、東海地震がまだ起きていないのです。


南海トラフ地震.jpg


政府の地震調査委員会は2013年5月に、南海トラフで起きる大地震の長期予測について規模や連動性が多様な事から、東海・東南海・南海の三地震を個別に評価する従来の手法を見直し、南海トラフ全体での地震発生を一元的に推計する方針を決め、南海トラフのどこかでマグニチュード8以上(M8~9)の地震が30年以内に起きる確率を算定する事にしたのです。

2018年1月1日時点ではこの確率は70~80%と推定、また国の中央防災会議が被害想定を公表したM9.1と云う最大級の巨大地震については発生周期が不明のため確立の計算は困難と判断し、M8級と比べて発生頻度は非常に低いとの評価に留めています。


海上保安庁では、2006年頃より南海トラフの海底15ヵ所で海底地殻変動の観測を続けており、国土地理院による陸上変動観測データとの統合解析により、南海トラフ地震想定震源域の周辺での歪みの蓄積分布(海のプレートに固着して引きずり込まれる陸のプレートの動き)が詳細にわかってきました。

其れによりますと、四国沖や遠州灘沖では歪みの蓄積割合が大きいことなど、プレートの固着状態の空間変動が大きく、これが南海トラフ地震の発生間隔や、連動性など地震の起き方に関係している可能性が高いのです。


これまで観測期間はまだ10年と短いですが、今後データが蓄積することで、次の南海トラフ地震の規模や起き方が絞り込まれると期待されています。

さらに、リアルタイムでの観測が可能になれば、大地震の発生に向けたプレートの固着状態の変化を検知するなど、大地震発生予測に向け大きな前進が期待されています。



参考文献および資料
認定特定非営利活動法人日本防災士機構 防災士教本
一般財団法人日本消防設備安全センター 自衛消防業務講習テキスト
一般社団法人東京防災設備保守協会 防災センター要員講習テキスト
東京都首都直下地震帰宅困難者等対策協議会 事業所における帰宅困難者対策ガイドライン
総務省消防庁 防災マニュアル
防災対策推進検討会議 自動車で安全かつ確実に避難できる方策
気象庁・局地的大雨から身を守るために 防災気象情報の活用の手引き
内閣府 防災情報のページより


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火山噴火のメカニズムと被害について [火山噴火]

長野県中部において地震群発、地下の浅い所にマグマがあるから??




2020年4月上旬あたりから、長野県中部を震源とする地震が群発していますが、27日にも松本して震度3の揺れを観測する等しており専門家は「しばらくは揺れに伴う土砂崩れや雪崩に注意が必要だ」と注意喚起を促しています。

長野県中部では今月上旬から地震が相次いで発生、今月23日にはマグニチュード5.5の地震が起きて松本市では震度4の揺れを観測しているのです。


長野県中部を震源とする地震.jpg


今月に入ってから発生した震度1以上の揺れを伴う長野県中部を震源とした地震は、27な日午後5時までに57階の上っており、この地域の地震に詳しい京都大学防災研究所の大見士郎准教授によりますと、「体に感じない揺れを含めると地震は数百回ほど起きている」と言う事です。

また地震活動は上高地の盆地の東の縁にある「徳本峠」付近から始まり、次第に北西方向へ広がっていると言う事です。


大見准教授によりますと、この地域では過去にも群発地震が繰り返し発生していて、最近では一昨年11月に活動があったほか、平成23年度の日が日本大震災の直後や平成10年にも活発な地震活動があったと話しています。

これまでの研究では、この地域は地価の浅い場所まで軟らかいマグマがあり、地震を引き起こす固い岩盤は比較的薄いと見られていて、地震の規模は大きくてもマグニチュード5~5.5だと言う事です。


長野群発地震.jpg


「地震はしばらく続く可能性が有る。新型コロナウイルスの影響で観光客はいないと思うが、震源が浅いためにマグニチュードが小さくても震源から近い場所では強い揺れに襲われる恐れがあり、土砂崩れや雪崩などに注意が必要だ」(大見准教授)


一方、震源の近くにある焼岳では地殻変動などのデータに今のところ異常はなく、大きな噴火につながるような兆候は見られないと言う事です。

ただ、この震源の近くには糸魚川~静岡構造線(フォッサマグナ)と中央構造線がか重なって走っていることが重要視されているのです。









活火山と噴火のメカニズム

活火山とは、今後も噴火活動をする可能性が有る火山の事ですが、個々の火山の寿命をあらかじめ知る事などは不可能なため、これまでの経験に基づいて活火山を定義することになります。

日本では諸外国と同様に「最近1万年間に噴火したことが有るか、現在も活発は噴気活動をしている火山」「活火山」と呼んでいます。


日本の活火山は北方領土や海底火山を含めると111に達し、2011年にそれまでの108火山に2火山が付け加えられ、さらに2017年に1火山が付け加えられました。

全ての火山の噴火履歴がが分かっているわけではない為、今後も調査が進めば活火山の数が増える可能性もああります。


地震と火山の関係.jpg


噴火はマグマが地表に近づく事で起こる訳ですが、マグマは地下の岩石が溶ける事で出来る流体であり、地球の内部のどこかに広大な流域を占めて常に存在しているものではなく、それぞれの火山の下で地球内部の岩石の一部が溶けて、一定の期間だけマグマが存在するのです。

この期間が個々の火山の寿命だと考える事が出来ますが、多くは数万年前から数十万年程度と考えられています。


マグマが作られるのは、地球内部の岩石の温度が融点を超える場合であり、一般的には地球震度の高温の岩石がその浮力のため上昇して比較的浅い場所(数十~100km程度の深さ)に達するときです。

しかし、日本のようにプレートが沈み込む地域ではマグマの生成に水が大きな役割を果たしていると考えられ、沈み込んだプレートが深さ100数十キロメートルに達すると、プレートから水が放出され、この水が列島直下のマントルに供給されるのです。


マントルの岩石の融点は水が加わる事で下がるため、地下50~70kmで岩石が溶け、マグマが作られるのです。

マグマは通常、周囲の岩石より密度が小さく軽いので、地表に向かって上昇を始めますが、途中で周囲の岩石と密度が釣り合い、停滞することが有ります。


このようなマグマがある深さ出ていた位置して作る溜りの事を「マグマ溜まり」と呼び、マグマ溜まりにある程度蓄積したマグマは結晶化が進むなどして再び浮力を得ると、やがて地表に向かって移動して火山噴火を起こすことになるのです。







爆発的噴火と噴煙

噴火によってマグマが地表にもたらされた場合に「マグマ噴火」と呼びますが、マグマが地表に現れない噴火(有名なのは神奈川県箱根の大涌谷など)も有り、火山によっては地下水がマグマの熱やマグマから分離した高温の気体成分などによって熱せられてできた熱水だまりを地下浅部に持つ物も有ります。

通常はわずかに漏れ出した熱水が噴気となって火口周辺から立ち上がることが多く、急激な減圧や加圧によってこの熱水だまりのバランスが崩れると、一気に水蒸気になって爆発し、周囲の岩石を吹き飛ばして噴火を起こすことがあり、これを水蒸気噴火と呼びます。


水蒸気噴火.jpg


マグマの熱によって水が一挙に水蒸気になる際にマグマと周囲の岩石を粉砕して噴火を起こすことが有り、この場合はマグマ水蒸気噴火と呼ばれ、マグマの性質に関係なく爆発的になり、噴出物中にマグマの破片などを含んでいます。


火山噴火には大量の火山灰や岩石辺を上空まで噴き上げるような爆発的なものから、岩石をドロドロと流し続けるもの、ゆっくりと高温で粘性の大きなマグマが上昇して溶岩ドームを形成するものまで様々なのです。

このような噴火の様式の違いは、主にマグマの化学組成の違いに起因するマグマの粘性と、マグマに含まれる水などの揮発成分の量によって決まるそうです。



参考文献および資料
認定特定非営利活動法人日本防災士機構 防災士教本
一般財団法人日本消防設備安全センター 自衛消防業務講習テキスト
一般社団法人東京防災設備保守協会 防災センター要員講習テキスト
東京都首都直下地震帰宅困難者等対策協議会 事業所における帰宅困難者対策ガイドライン
総務省消防庁 防災マニュアル
防災対策推進検討会議 自動車で安全かつ確実に避難できる方策
気象庁・局地的大雨から身を守るために 防災気象情報の活用の手引き
内閣府 防災情報のページより


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噴火現象と火山灰による災害 [火山噴火]

火山噴火の様式や規模は様々、それに応じて災害の種類や規模が変化する



もし、三宅島や長崎の有珠山のように、または富士山などの活火山が爆発的噴火をした場合、放出される噴出量が多い程、つまり規模が大きくなればなるほど噴煙の高さは高くなる傾向にあります。

大噴火で上空に向かって上昇する噴煙は、周りの大気と密度が釣り合うと上昇を続けられなくなり、水平に広がって傘上の噴煙となります。


このまま火山灰が降下すると、噴火地点を中心にして、中心部が厚く周囲が薄いという同心円状の火山灰の厚さ分布が予想されますが、日本のように北半球の中緯度地域では西風が卓越するために、傘雲から落下する途中で火山灰は東に流されます。

このため、地表に降り積もる火山灰は噴火地点より東側の地域に主に分布することになります。


傘上部分があまり大きくならない噴煙の場合、風の強さは対流圏の最上部付近が最も強くなっているために噴煙は風に流されることになり、このため、このような噴煙から降り積もった火山灰は火口から細い扇形に分布することが多いのです。


火山噴火、空振.jpg


さらに噴煙の高さが低い時には、地表付近の風に流されますが、風向きは季節によって変化するため、長い期間を通してみると火山の周囲に均等に降り積もる事になります。


なお、気象庁では爆発的噴火のうち、空振(くうしん=空気中を伝わる空気振動、圧力波の一種)の大きさが一定程度大きなもののみを「爆発的噴火」とよび、他の爆発的噴火は単に「噴火」と呼んでいます。






噴 火 の 前 兆 とは

マグマは岩石が溶けたもので高温なため、あるまとまった量のマグマが地表に接近すると、地表では何らかの異常現象が観測されるのですが、このような現象は噴火に先立って生じるため、「前兆現象」と呼ばれています。


火山噴火の前兆現象の例

1) 地震の発生

深い場所からマグマが周囲の岩石を壊したり、、押しのけたりしながら地表に向かって序章してくるので地震が発生します。

2) 地殻変動

あるまとまった量の物質が浅い所に移動してくるので、火山帯が押し広げられて、ごくわずかですが膨れる等の地殻変動が生じます。

3) 磁力の低下、地下水の温度上昇

高温のマグマによって周囲の岩石の温度が上昇して、岩石の持つ磁力が低下したり、地下水の温度が上昇したりします。


大涌谷.jpg



普通、何年も前から前兆現象が捉えられることはなく、前兆現象が捉えられる期間も数時間前から数カ月前から等様々で、この理由の一つとしてマグマの粘性が化学組成や温度によって大きく変化するため、と言われています。

マグマの移動速度は粘性に半比例すると云われ、粘性の小さなマグマは移動を始めてから短時間で地表に達するため、前兆が発生してから噴火までの時間がないことが多い理由です。


一方、粘性の大きなマグマはゆっくりと移動するために、前兆現象が発生してもシグナル変化量が小さすぎるので、しばらく観測を続けないと、単なるノイズなのか?、それとも前兆なのか?判断できないことが多い、と言われる原因です。

このため、確実に「前兆を捉えた」と分かるのは、噴火の直前となる事が多いのです。







噴 火 現 象 による災害

火口から放出される噴出物はそのサイズによって、①火山灰(直径2ミリより小さい)、②火山レキ(直径2ミリ~64ミリ)、③火山岩塊(直径64ミリより大きい)に区分されていますが、このような学術的な分類のほかに、日本では主に気象庁発表で「火山灰」「噴石」という区分も用いられています。

最近ではマスコミも頻繁に使用されているので、この区分もすでに市民権を得た防災用語と考えられていますが、この場合の「噴石」は人にあたるとケガをする危険のあるサイズ以上の噴出物を指し、岩石の比重にもよりますが、概ね、こぶし大以上です。


噴石の中でも直径が50センチを超えるようなものは、あまり空気の抵抗を受けずに火口から弾道を描いて飛行します。

このように弾道を描いて飛行する噴石(火山岩塊)の飛行距離は、放出の速度と放出された角度にもよりますが4kmまで届くことが有ります。


サイズの小さい噴石は空気抵抗のため弾道距離は短いのですが、噴煙と共に上空まで運ばれた場合、風に流されて遠くにまで到達することが有ります。

直径が10センチ程度の噴石でも10km以上も風に運ばれて落下することも有るので、噴火の際の風下側では火山灰だけではなく、このような噴石にも注意する必要があるのです。


火山灰が作物に積もると枯死するなどの被害を受けたり、積もった火山灰の重みで電線が切れて停電を引き起こすことも有るのです。

また、大量に屋根に積もると、その重みで屋根がつぶれることが有るなど、特に火山灰が降雨によって水を含むと非常に重たくなるため、注意が必要となります。



参考文献および資料
認定特定非営利活動法人日本防災士機構 防災士教本
一般財団法人日本消防設備安全センター 自衛消防業務講習テキスト
一般社団法人東京防災設備保守協会 防災センター要員講習テキスト
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溶岩流・火砕流・火災サージによる災害とは? [火山噴火]

火山から起こる災害は溶岩ばかりではない!他にもすべてを焼き尽くし物があった。



火山が噴火すると、火口から流出したマグマが火山の斜面を流下していきますがこれを「溶岩流」と呼び、水と同じように低い所に向かって移動していきます。

マグマは通常900℃から1200℃の温度なので、この範囲に山林や住居が有れば焼失し時には集落全体が埋没してしまう事になります。


日本では、1983年に三宅島の噴火で阿古の集落が埋没していますし、海外の例では1973年1月にアイスランドのヘイマエイ島で噴火が発生し、町の大半が溶岩流と噴石で埋め立てられてしまいました。

この時、溶岩流は港に向かって流下し、島の産業を支える漁港が埋没する恐れがあったため、溶岩に大量の海水を注いで、冷却・固化させて溶岩の堤防を作り、後続の溶岩流をこの堤防に阻ませて流路を変え漁港を救ったのです。


溶岩流を阻止するために、ブロックを積み上げて堤防を作る事もありますが、ブロックの密度は溶岩に比べて小さいために溶岩流によって持ち上げられて阻止できません。

イタリアのエトナ火山では溶岩流が頻繁にに流下し、住宅地などを埋積してきましたが、1980年代以降はどう流路を緊急に掘削して溶岩の流路を変更する試みを行い成果を上げています。







火砕流・火災サージによる災害

火砕流は、溶岩片などを含む高温の粉体(溶岩片と火山ガスの混合)が火山の斜面を高速で流れ下る現象を云い、内部温度は数百℃以上に達し、その流下速度は時速100kmを超えることも有ります。


火砕流.jpg


火災サージは、火砕流の先端や周囲に発生する比較的溶岩片の少ない熱風上の物ですが、その温度や速度は火砕流本体とほとんど変わりません。

したがって、火砕流や火災サージの通り道にあたったところではすべての物が焼き払われてしまい、生存者はありえないことになっています。


1990年11月に始まった雲仙普賢岳噴火では、1951年5月末から山頂に現れた溶岩ドームの一部が崩壊して発生する火砕流が頻発し始めました。

同年6月3日には、比較的規模の大きな火砕流・火災サージが発生し、死者・行方不明者43人の大惨事となってしまったのです。


火砕サージ.jpg


水蒸気噴火でも火砕流が発生することが有りますが、この場合は数百℃以下の温度で、樹木を焦がしたり発火させたりすることは有りません。

このような火砕流を低温火砕流と呼び、500℃以上に達する通常の火砕流と区別するときがあります。







山崩壊(山体崩壊)による災害

火山体の崩壊は大量の土砂移動を伴うため、大規模な災害にになる事が多く、火山山体は一般に、火山噴出物などが降り積もって出来たルーズな地形であり、火山活動に伴うガスなどによって変質が進んだ場所も存在しているため崩壊がしやすいと言えるでしょう。

このため、噴火や地震などによって大規模な崩壊が起こり、岩屑雪崩や土石流などが発生し、大きな災害につながる恐れがあります。


日本では1888年7月の磐梯山の水蒸気噴火によって大規模な山体崩壊が有名で、この時に発生した岩屑雪崩が麓の村々を埋没させると同時に、崩壊した土砂が川をせき止め、檜原湖や、秋元湖、五色沼などの幾つもの湖を造ったのです。

近年では、1984年9月の長野県西部地域地震による御嶽山の崩壊が有ります。


海や大きな湖に崩壊土砂が流れ込みますと、津波を発生させ、さらに被害を増大することが有ります。

海域での地震による津波と比べ、火山噴火に伴う津波に対して警報を出すことは困難なため、海域の火山が噴火している時には、海岸付近では細心の注意が必要となります。







土石流(火山泥流、ラハール)による災害

火山噴火で降り積もった火山灰などの細粒の噴出物には、雨水が染み込みにくいため、降水を集めて一挙に大量の流水となって、これが噴出物と共に流れ出して火山泥流(「土石流」と呼ぶことが多い)が発生します。

積雪が噴出物の熱で溶かされて大量の流水が発生し、噴出物と共に流れ出して泥流(土石流)が発生することも有り、これは「融雪型火山泥流」と呼ばれています。


火山泥流.jpg


噴火時の現象を「火山泥流」、噴火終了後の現象を「土石流」と区別することも有りますが、最近では外国での呼び方に倣って噴火時、噴火後を問わず、火山地域で発生する泥流・土石流を全て「ラハール」と呼ぶことも多いそうです。

土石流の速度は時には時速100km程度に達することも有り、火砕流と共に大規模な被害につながりやすいのです。


マグマ水蒸気噴火の際には、特に細粒の火山灰が放出されることが多く、このような場合には降雨の浸透性が悪いために、比較的少量の降雨でも土石流が発生することが有ります。

融雪型火山泥流は中部以北の火山で積雪時に噴火した場合、融雪型火山泥流が発生する可能性が有ります。



火山ガスによる被害

火山活動に伴って放出される火山ガスの大部分は水蒸気ですが、二酸化炭素、二酸化硫黄、硫化水素などの有害ガスも放出されます。

これらの有害ガスは大気よりも重いために、谷筋などに沿って流下したり、窪地に集積して被害をもたらすことが有るのです。


日本では、草津白根山や安達太良山などで、硫化水素による犠牲者が出た例があるほか、2000年の三宅島噴火では8月ごろから二酸化硫黄の噴出が始まり、9月には日量10万トンを超えるほど、大量噴出が数年以上にわたって継続したため、全島避難した住民が帰島出来るまで4年5ヵ月を要したのです。

2015年9月には二酸化硫黄濃度も下がったため、居住区域におけるすべての規制が解除されたのです。


このように排出される有害ガスによって避難を余儀なくされるだけではなく、規制が解除できなければ先祖代々続いた土地に戻れなくなってしまう場合も有るのです。




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認定特定非営利活動法人日本防災士機構 防災士教本
一般財団法人日本消防設備安全センター 自衛消防業務講習テキスト
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東京都首都直下地震帰宅困難者等対策協議会 事業所における帰宅困難者対策ガイドライン
総務省消防庁 防災マニュアル
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火山噴火予知は可能か? [火山噴火]

火山噴火の短期予知は、一部の火山を除いて・・・・・・・!、日常において細心の注意が必要



日本列島に縦横して鎮座するように連なっている火山群、はたしてこの火山群の中から火山噴火の予知が可能なのだろうか?火山噴火予知連絡会・火山観測体制等に関する検討会が平成27年3月に次のような発表を行いました。

これは平成26年9月27日に噴火した御嶽山水蒸気噴火によって、死者57名、及び行方不明者6名(平成26年10月28日時点)という惨劇が起きてしまったことを踏まえたもので、平成19年に気象庁が噴火警報の発表を開始してからは初めて犠牲者を出す噴火だったのです。


御岳山噴火.jpg


また、この犠牲者数は近代的な火山観測が始まってから、大正15年十勝岳噴火に次ぐものであり、昭和40年1月1日に気象庁が火山情報の発表を正式に開始して以来最多の人命を失ってしまったのです。

噴火に先行して出現する現象は、同じ火山であっても同じとは限らないと言う事で、一部の現象のみが観測されて噴火に至る場合も有るなど多様性がみられるのです。


特に御岳山噴火のような水蒸気噴火においては、先行現象の規模が小さく、現象がみられる場所も火口付近など比較的狭い領域に限られる場合が多いと言われてきました。

火山観測体制に関する検討会では、これまでの調査研究の推進及びその成果を踏まえた監視体制の在り方、観測データの流通および共有化体制、各機関の役割分担と観測精度の優先度を踏まえた火山ごとの具体的な観測網の在り方についても検討を行ってきました。


その結果として、現在の火山に関する知見、火山噴火予知の科学的水準では、水蒸気噴火の発生を予測することは困難であると発表したのです。






御岳山噴火で明らかになった課題とは?

御岳山噴火の災害を防止できなかったという観点から、噴火に至るまでの気象庁の対応からいくつかの課題が明らかになりました。


1) 水蒸気噴火の兆候把握に役立つ山頂付近での観測体制が十分でなかった。

2) 山頂直下で2007年以来の一時的な火山性地震の増加を認識していたが、過去の噴火前に見られた火山性微動や地殻変動が観測されておらず、このような場合の総合的に評価する体制が十分でなかった。

3)火山活動に変化があった場合の連絡や意見交換の在り方が関係者間で定められていなったことも有り、名古屋大学や火山噴火より委員会との間で十分な意見交換、認識の共有がなされていなかった。


このような点を踏まえ、噴火による人的被害を二度と発生させないためにも、気象庁は、今後以下の事項について、真摯に対処することが必要である。

◎ 水蒸気噴火の先行現象を把握するための、火口付近の観測体制。

◎ 噴火警報を発表するための火山活動評価の在り方。

◎ 現地調査や現地での情報収集、多くの専門家の意見を聞くための体制。


緊急に対処すべき事項

検討会では、御嶽山で明らかになった課題の基づき、御嶽山を含む全国の活火山において緊急に対すべき事項として、以下の項目を検討し「御岳山の噴火災害を踏まえた活火山の観測体制の強化に対する緊急提言」を纏め、提言をしています。

① 火口付近への観測施設の増強

② 水蒸気噴火の兆候をより早期に把握できる手法の開発。

「御嶽山の火山活動の推移を把握するための観測強化。常時監視が必要な火山の見直し(八甲田山、十和田、弥陀ヶ原の追加)」

を必要としたのです。。







火山噴火予知と観測体制

火山噴火予知の5要素として、① いつ噴火するのか、② どこで噴火するのか、③ どれくらいの規模の噴火か④ どのような噴火化、⑤いつまで続くか、を明らかに出来るようになる事が期待されています。

十分な観測体制が取られている火山で、やや大きめの噴火が発生する場合には、噴火の前兆現象を捉えて、何時頃噴火するのかについては把握できると考えても良い・・・と云う所まで来ています。 


気象庁によって24時間体制で監視されている火山を常時観測火山と呼びますが、日本の111の活火山すべてがこの対象になっているわけではないのです。

2009年時点では34火山で有りましたが、2010年には観測点の増設が行われ47火山となりました。


火山噴火予知連絡会の観測体制検討会による2014年度の提言を受けて、2016年11月から八甲田山、十和田、弥陀ヶ原の3火山柄谷咥えられ、常時観測火山は50火山となったのです。

しかし、百年以上噴火していなくて、常時観測も行われていない火山では、今後不意打ち噴火などの可能性も考えられますよね、ここの火山のどこで(山頂か山腹かなど)噴火するかも噴火前に特定することは地殻変動観測などが十分に行われている火山でない限り、困難なことが多いのです。


このため、噴火警戒レベル導入の当初から、各火山のパンフレットには、レベルの引き上げは、噴火が発生した場合か、噴火の恐れがある場合に引き上げらると明示されていましたが、このことの周知が不十分でした。

活火山への登山や、活火山近くの経済活動、日常生活には細心の注意が未だ必要とされています。





火山噴火のの中・長期予測

噴火の規模や様式をあらかじめ予測することは困難であって、よほど規則的に噴火を繰り返ししているような火山か、地下でのマグマの蓄積状況を地殻変動観測などによって、連続的に把握できている火山でない限り、次の噴火が何時頃起こるのかについて数年ないし数十年スケールの予測を行う事は困難なのです。

つまり、今、何事もない火山であっても、数年先に突然地震活動や噴火活動が活発になって、噴火に至ると云う可能性も十分に考えられることなのです。


このように中・長期予測も現時点では困難ですが、それぞれの火山について、ボーリングなどを活用した詳細な地質調査によって、数百年から数千年スケールでの噴火の繰返し周期などについての知識が得られていれば、地殻変動観測によるマグマ蓄積量の推定と合わせて、ある程度の長期てな予測を行う事も可能となるのでは、と考えられています。

個々の火山について、中・長期予測を行う事は困難でも、国全体の火山活動について100年程度の時間枠で考えると、ほぼ一定程度の活動度であるとみなすことが出来るのです。


日本では3億立方メートル以上の噴出物を出す噴火は1世紀に5~6回程度発生していますが、1929年の北海道駒ヶ岳噴火以来、3億立方メートル以上の噴火は起きていないのです。

最近の100年ほどは以上に火山活動が低調であったことから、21世紀中には数回以上の大きな噴火が起こる可能性が高い、と言われています。


20世紀以降、マグニチュード9程度の巨大地震は6回発生していますが、いずれも数年以内に近くの火山が噴火しており、日本でも誘発火山噴火が警戒されましたが2019年1月現在誘発火山噴火は確認されていません。

東北地方太平洋沖地震は日本の地殻構造に大きな変化を与えたことは確かなので、今後も火山活動の活発化などに注意する必要が有るでしょう。




参考文献および資料
認定特定非営利活動法人日本防災士機構 防災士教本
一般財団法人日本消防設備安全センター 自衛消防業務講習テキスト
一般社団法人東京防災設備保守協会 防災センター要員講習テキスト
東京都首都直下地震帰宅困難者等対策協議会 事業所における帰宅困難者対策ガイドライン
総務省消防庁 防災マニュアル
防災対策推進検討会議 自動車で安全かつ確実に避難できる方策
気象庁・局地的大雨から身を守るために 防災気象情報の活用の手引き
内閣府 防災情報のページより


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火山噴火に見るレベル3とは [火山噴火]

熊本県阿蘇市の阿蘇中岳第一火口が10月20日午前11時43分に噴火が発生しました。

阿蘇中岳では10月13日に噴火警戒レベルを1から2に引き上げたばかりで、火口周辺への立ち入りが規制されていた為、甚大な被害発生にならなかったことが幸いですね。

観光客が居る中での噴火で、黒い噴煙が立ち上がる近く片駐車場に急いでい戻る観光客の姿がTVの映像で多数確認出来る等、緊張感が漂っていました。

気象庁は噴火警戒レベルを2から3へ引き上げていますが、レベル3になったのは2016年10月以来の5年ぶりになります。

気象庁の発表では、火口から概ね2キロの範囲では、噴火に伴う大きな噴石及び火砕流に警戒を呼びかけていますが、風下にあたる地域では火山灰だけではなく小さな噴石が遠方まで風に流されて降る事も、また火山ガスにも注意が必要だと呼びかけています。

気象庁噴火警戒レベルの説明.jpg



気象庁によりますと今回の噴火で大きな噴石が火口から900mまで飛んだほか、高温のガスなどを含む火砕流が火口から1㎞以上のエリアまで到達したそうです。

今後の火山活動について、さらに大きな噴火が起こる可能性について「マグマの上昇を示す明瞭な地殻変動はなく、現時点では考えにくい」とした上で、、阿蘇山では火口から4㎞以内に住居などが無いなどから「避難までは必要ない」としています。


ワンアクティブ



噴火レベルについて

気象庁は火山が噴火すると噴火警報と、中岳のように「噴火警戒レベル3の入山規制」のような情報が発表されることが有ります。

噴火の規模によっては大きな噴石や火砕流、溶岩流などが発生し、周辺住民の生命や住居に被害を及ぼす危険もあると云えるでしょう。

噴火警戒レベルは5段階あり、火山活動の状況に応じて「警戒が必要な範囲(=生命に危険を及ぼす範囲)と住民が「とるべき対応」をそれぞれまとめています。

噴火レベル.jpg


レベル1=活火山であることに留意
活火山は基本的に平穏で、警戒の対象は火口内などに限られ、入山規制も行われません

レベル2=火口周辺規制
火口周辺への立ち入りが規制されます。

レベル1とレベル2までは、周辺住民の居住地域では通常の生活が送れるとしています。


レベル3=入山規制
警戒の対象は火口から居住地域までに広がり、登山・入山規制などの対応が取られます。住民は火山活動に注意しながら通常の生活を送る事になります。(今回の中岳噴火では4キロメートル圏内に住居がが無い事から避難の必要はなし)

レベル4=避難準備
居住地に大きな被害がもたらす噴火が予想される。居住地域では避難の準備や高齢者らの事前避難が求められます。

レベル5=避難
居住地域に大きな被害をもたらす噴火が発生した場合や、その可能性が切迫している場合に発表されます。また、危険な居住地からの避難が求められます。


モウダス


48の活火山で警戒レベルが運用されている

火山帯国と云っても過言ではないほど日本には現在111の活火山が有り、活火山とは定義で「概ね過去1万年以内に噴火した火山、及び現在活発な噴気活動のある火山」とし、火山噴火予知連絡会が選定しています。

其の活火山を24時間体制で観測・監視している火山(常時観測火山)が50あり、噴火警戒レベルはそのうち48の火山ので運用されているのです。

具体的な活火山として上げられるのは富士山、八小根山、御嶽山、桜島、阿蘇山等になります。

この48の活火山では気象庁と地元自治体との間で、噴火の規模や影響範囲に応じた警戒レベルの設定と、地域の避難計画の策定などの協定が進んでいて、今後、人が住んでいない硫黄島を除く、残る十和田(青森・秋田県堺)でも設定を進めていく事になっているそうです。

興味深いのは噴火警戒レベルの引き上げや引き下げの判定基準は各火山ごとに異なり、それぞれの特徴に応じていると云う事です。

△火山ガスの放出量 △地震や火山性微動の回数の時間 △噴火の規模 △噴石や火砕流、溶岩流などの発生規模などの項目が設けられています。

阿蘇山中岳噴火.jpg



火山災害で想定される大きな噴石、火砕流などが発生した場合は避難までに時間的な猶予は殆どないため生命の危険性が高くなります。

その為、政府は事前に火山防災マップなどで噴火警戒レベルに応じた危険な場所や避難場所などを確認する事を呼び掛けています。


噴火に関する情報の一つに「噴火速報」が有りますが、火山が噴火した事を登山者らにいち早く伝えるもので、常時観測火山が対称になっています。

監視カメラや地震計、空振計などの観測データを活用し、1回目の噴火や噴火が続く火山でそれ以前を上回る規模の噴火を確認した場合に気象庁が発表します。


気象庁は阿蘇山中岳の噴火警戒レベルについて、判定基準の見直しが必要かを検討する事にしているようです。

今回の噴火では、気象庁が設定して居た警戒範囲を超える規模の火砕流が発生した事で、改めて予測の難しさが浮き彫りになったと見ています。

主な理由としては、19日時点では火山ガスの放出量が基準を下回っていた為、レベルを据え置いていた事が上げられています。

科学が発達し計測機器によるデータ解析が進んでも、自然の動きには予測が追い付かないと云う事なのです、私達は迅速に対応して避難行動を早くとることが大事なのではないでしょうか。


PELTHIA




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