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住民主体の避難行動をとることが大事 [風水害]

近年の風水害は従来の常識を覆す形で発生している。


皆さんもお気付きかとは思いますが、近年のTVやラジオで気象庁が発表する情報として数年に一度の大雨や大雪、または強風、台風などが伝えられていますが、実はそれらが今までの常識を覆す災害を我々にもたらしているのです。

行政機関は防災情報、避難情報の改善に努めていますが上記のように、近年の風水害はしばしば、従来の常識を覆す形で発生し、加えて大雨による被害、土砂災害は夜間にも発生しやすいために、防災情報が命を守る事に繋がりにくいケースも生じていると云われてす。




「たら・れば」では命を守れない

このような状況下で求められているのが、住民主体の避難の在り方を徹底する事なのだそうですが、其れはどのような事なのでしょうか。

自治体が適切な避難勧告を出せない場合も有る事等から、自治体の避難勧告を待たないで自主避難をする事、また自治体指定の避難所へ移動する事が場合によっては最適と限らないため、浸水が急激な場合には、冠水時の屋外移動の回避、自宅の2階などへの一時的な避難(垂直避難)等、状況に応じた避難行動を、最終的には住民自身が選択し判断する必要がある、と云う事なのです。

要配慮者タイムライン.jpg


2015年の鬼怒川決壊による茨城県常総市周辺の浸水状況も、2018年の西日本豪雨災害における倉敷市真備町の浸水状況も、事前に公表されていた洪水ハザードマップの想定とほぼ一致していたそうです。

つまり被害は想定可能だったと云われており、住民があらかじめ洪水ハザードマップや土砂災害警戒マップ等を確認し、避難のタイミングや移動方法を確認しておけば被害を避ける事が出来たり、軽減したりする事が出来るはずなのです。

「たら・れば」の話になってしまいますが、如何に住民自体が行動を起こさなければならないのか大事なのは分かりましたが、どのタイミングで動き始めるのかは分かりにくいものです。


そこで気象災害については、国土交通省や防災関係機関が河川毎に作成している「タイムライン(事前防災行動計画)」の考え方を活用し、住民自身がいつ、どのようになったら避難するかをあらかじめ決めておく、住民自身によるタイムライン(我が家のマイ・タイムライン、学校のタイムライン、地域のタイムライン)の作成が望まれるのです。

また、こうした住民が主体となって避難への取り組みを強化するためには、行政、消防団などと一体となって活動する多くの地域防災リーダーの力が必要であり、防災士がその一端を担っていく事が期待されているのです。

多くの方の防災士への参加が期待されていますので、興味のある方は日本防災士機構のHPをのぞいてみて下さい。



要配慮者利用施設に避難計画作成を義務付け

皆さんの記憶にもある、2016年8月の台風で岩手県岩泉町の高齢者施設で入所者9人が死亡したことを受け、「水防法等の一部を改正する法律」(2017年6月19日施行)により、要配慮者利用施設の避難体制の強化を図る「土砂災害防止法」が2017年6月19日に改正されました。

改正された内容は、土砂災害警戒区域内の要配慮者利用施設の所有者または管理者に対し、「避難確保計画」の作成及び、避難訓練の実施を義務付けられたのです。

これにより、施設利用者の円滑かつ迅速な避難の確保を図る事が出来るようになったのです。

タイムラインを作成しよう.jpg



要配慮者利用施設とは、市町村地域防災計画にその名称・所在地が定められた施設で、社会福祉施設、学校、医療施設その他の主として防災上の配慮を必要とする利用者が利用する施設を言います。

避難確保計画とは、防災体制、避難誘導、施設の整備、防災教育及び訓練の実施の他利用者の円滑かつ迅速な避難の確保を図るために必要な措置に関する事項を定めたもので、国土交通省では、「要配慮者利用施設管理者のための土砂災害に関する避難確保計画作成の手引き」及び「要配慮者利用施設における避難に関する計画作成の事例集(水害・土砂災害)」をHPに掲載して計画作成の参考とすることを促しています。



住民、自治体の避難情報「分からない」

北海道では2016年8月に台風10号など上陸・接近した4つの台風や大雨で4人が死亡し、2人が行方不明となった大きな災害が有りました。

今まで北海道には台風は来ないとさえ言われていましたが、過去に例のない大型台風によって甚大な被害と損害を残しました。


これを受けて土木学会は、避難指示などが出された道内の住民を対象にアンケートを行った結果、回答した半数以上が自治体の出した避難に関する情報について「分からない」と感じていたことが分かり、自治体の情報の伝え方に課題のある事が浮き彫りになったのです。


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参考文献および資料
認定特定非営利活動法人日本防災士機構 防災士教本
一般財団法人日本消防設備安全センター 自衛消防業務講習テキスト
一般社団法人東京防災設備保守協会 防災センター要員講習テキスト
東京都首都直下地震帰宅困難者等対策協議会 事業所における帰宅困難者対策ガイドライン
総務省消防庁 防災マニュアル
防災対策推進検討会議 自動車で安全かつ確実に避難できる方策
気象庁・局地的大雨から身を守るために 防災気象情報の活用の手引き
内閣府 防災情報のページ
環境省 人とペットの災害対策ガイドライン
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都市防災を根本的に考える [防災対策]

人口集中と高蜜高層化、新旧の混在、地盤沈下や軟弱地盤、それでも我々は生活していかなければならない


私たちの住んでいる日本列島は以前にも記述していますが、世界で稀に見る3つのプレートの上に乗っているのは皆さんご存知ですよね。

特に首都である東京はそのもっとも危険なところにあり、30年以内に起きるであろうと云われている首都圏直下型地震に向け、準備・対策を練っておかなければならないのです。


リスクレベルを減じる事を考える必要がある。

都市の多くは農業・水産業・林業などの第一次産業からの生産物の集約と、流通の起点として生まれている事は、学校教育の社会で習ったと思いますが、流通の基となる移動手段は河川周辺の平坦な場所に立地し、利便性を高めていくうちにそれはしばしば河口エリアに集中する事になってしまったのです。

これ等が第二次産業、三次産業が発達して人口集中が進み、それに伴って道路や建物が増え、交通網が作られて都市が構築されてきた。

こうした都市の成り立ちや発展の経緯は個々の都市によって異なり、世界一と云われる巨大都市・東京を核とする首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)と、札幌、仙台、名古屋、京都、大阪、広島、福岡と云った拠点の大都市、その他の拠点都市では都市機能の集積度合いが違うのです。

防災 リスクレベルを減じるには.jpg


それらを考えた上での都市防災の目標は、都市化によりプラスされたリスクを減じて、周りに人が居ない野中の一軒家と同等レベルのリスクレベルにする事であって、リスクをゼロにする事では有りません。

人知を超える自然災害に対しては、この「減災」しか立ち向かう術はなく、その中で同時に損害の選択も必要になります。

家を捨てれば助かる命は過去に多数の例が有りましたが、しかし、災害の中で最優先されるのは人命で、このことは肝に銘じておかなければなりません。




防災面から見た都市の特徴とは

私たちが知っておかなければならない防災の基本は、自分の安全は自分で守る事ですが、都市特有の要因がそれを阻害することが有ります。

防災面から見た都市の特徴.jpg


その為には、まず都市特徴をきちんと把握しておくことが大切で、都市の成り立ちや規模などからそれぞれの都市別にレベルの差は有りますが、特徴提な危険性やリスクを知ったうえで、地域や職場の防災・減災活動に携わる事が求められます。

① 人口集中と施設の高蜜高層化
商業が活発な都市部において人が増えれば居住、生活、就労などの場所が必要になり、しかも利便性や効率性から施設も集中するため、高蜜高層化は避けられません。

② 新旧の混在とその結果の危険の存在
「ローマは一日にして成らず」の言葉があるように、殆どの都市は一世に出来たわけではなく、次第に大きくなってきた訳で、住居や施設の建設時期はみなバラバラなのです。
 建築基準法で耐震性や耐火性の新たな基準を作っても、古い建物に遡及させる事は難しく、その為、旧基準の建物が残り、危険の偏在が生じてしまうのです。

③ 地盤沈下や地盤軟弱
生活の分布が広がるにつれて土地が足りなくなり、埋め立て地などの軟弱地盤も利用されるようになります。
 また、地下水の汲み上げ等による地盤沈下も起こりやすく、液状化や都市水害の危険性にもつながるのです。

④ 地下空間の進出
高蜜高層化は上への拡大ばかりではなく、地下へも広がり、より深くに拡大して行きます。
 交通網や、商業施設なの度地下展開は多くの都市にみられ、変化のスピードに規制が追い付いていない等のが現状です。

⑤ エネルギーの高密消費と供給網での大量蓄積や滞留
都市部への人口集中の結果、エネルギー消費も高蜜になり、其れに伴って電力やガスの供給網も高密度になり、ガソリンスタンドも各所にあるなど、これ等の平常時には安全に管理されているエネルギーが、災害時には火災、爆発の原因となる事も有ります。

⑥ 住民の移動距離の大きさと人間関係の希薄化
人間の数は多くても互いに知らないし、濃密な人間関係を遮断できることが都市の魅力の一つですが、これ等は巨大化すればするほど顕著になります。
 さらに夜間人口と昼間人このギャップに見られるように、生活と仕事などの場が遠くなり、さらに流動性が高い旅行、出張、レジャーなどの人達も加わるのです。
 この「顔が見えにくくなった」と云う都市人間の特性は災害時には特に留意しなければなりません。




新旧混在の問題点

都市の特徴としては、新旧の混在と危険の偏在が上げられますが、その端的な例が古い建物と新しい建物の混在と云えるでしょう。

古い建物には、地震による倒壊の危険ばかりでなく、火災の危険もあります、このため各都市では、都市の弱点である木造密集地域対策、或いは密集市街地対策を進めて都市の防火区画化を急いでいます。

東京都木造地域不燃10年推進プロジェクト.jpg


東京都を例にとりますと、山手線の外側を中心に面積で約4割が木造密集地になっています。
 都の木造密集地域の定義は、木造建築物棟数率70%以上、老朽木造建築物棟数率30%以上、住宅戸数密度55世帯/ha以上、不燃領域率60%未満となっていますが、これ等の地域は高齢化が進むとともに、利権関係が複雑で建て替え意欲が低いのです。

この為、都は首都圏直下地震を想定し、2010年から「木造地域不燃10年推進プロジェクト」をスタートさせました。

① 市街地の不燃化により炎症による焼失ゼロ(不燃領域率70%)を実現

② 延焼遮断帯となる主要な都市計画道路を100%整備

を掲げ、こうした区画を整備する事で「燃えない街・燃え広がらない街」の実現を目指しています。

この木造密集地域対策は、どの大都市にも共通する課題で「災害に強い街づくり」を進めるうえで大きな柱となっています。





参考文献および資料
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一般財団法人日本消防設備安全センター 自衛消防業務講習テキスト
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北陸地方に多くみられる融雪雪崩 [冬山]

冬の1月・2月でも起きる北陸地方の融雪雪崩とは



2021年になってから上信越、東北、北陸等高速道路において大雪による家屋の倒壊の恐れや交通障害が多数起きています。

TVなどのニュースによってご存知の方も多いとは思いますが県の自衛隊派遣要請が行われ、隊員の手によって建物に降り積もった雪の除去や道路上の雪の除去が各地で行われている姿が連日のように放映されています。


自衛隊員の派遣要請は、これは自衛隊員の訓練の一環として行われているものであって、決して便利的な使い方ではないのです。

政治的な思惑が強く出る派遣要請ですが、冬山訓練と人命救助が連立されていると云う考えの行動であり、これ等によって多くの人命が助かっているのですから感謝しかありませんね。 


雪崩はなぜ起きるのかご存知の方は少ないですよね、雪崩の定義とは「斜面上にある雪や氷の全部、または一部が肉眼で識別できる速さで流れ落ちる現象」(日本氷雪学会「雪と氷の時点」から)を指します。

一般的に雪崩は積雪が崩れて動き始める「発生区」と発生した雪崩が通る「走路」、なだれ落ちた雪が堆積する「堆積区」から成り立っています。また雪崩によって堆積された雪を「デブリ」と呼びます。

ダウンロード.png


除雪管理されている道路は雪崩の発生区ではなく、走路や堆積区にあたり、雪崩発生が交通に大きな障害を及ぼすことも有るのです。

雪崩の起きる構造については雪崩と土砂災害の類似点の中でご紹介しておりますので参考にして下さい。




なぜ北陸地方は融雪雪崩が多いのか?

地滑りが発生する紫因として、地質や地形等が上げられますがいずれの場合も直接的には降雨や融雪、地震、河川の先掘りなどの自然的な誘因をキッカケとして発生しています。

北陸地方においては、これ等の自然誘因の中で、特に融雪水を誘因とする地滑りが多くみられる、と云われています。

北陸地方は寒冷地方と比べて比較的冬季の気温が高い地域での積雪(準寒冷地積雪)であって、寒冷地積雪と準寒冷地積雪では密度、雪温等の雪室や気温、地温、日射量等の気象条件が大きく異なるのです。

融雪雪崩の多くは、積雪後の気温の上昇の時に多くみられ、融雪が急であったり、雨が降ったりした場合に、大雨が降った時と同様な災害、融雪洪水なども発生するのです。


大雪の表面は日中の気温上昇で融け、夜の寒さで固まって氷状態になり、そして、その上に新たな雪が積もる事になるため、新しく積もった雪は滑りやすくなるのです。

北陸地方などの場合は、地温が高いため地表での融雪が見られ地滑りが起こりやすい状態に、その為、融雪と雪崩の他にも地滑りにも注意が必要になります。


地滑りは、山地などで斜面を構成している岩石や土壌が日々の変化が追える程度の速さで(極めて緩慢に)斜面化に滑り落ちる現象です。

土中の粘土(真砂土など)が水を吸うと、一種の滑剤となって地滑りを助長するため、雨下降ったりすると誘発されると言われる所以です。

融雪雪崩.png


融雪の時期には、水がゆっくりと地面に染み込んで、思わぬところで地滑りなどの誘因となる事が有るのです。

その為、大雪の後の気温上昇は、融雪と雪崩に注意が必要ですが、地滑りなどの土砂災害に対しても注意が必要なのです。


雪崩にはすべり面の違いによって「表層雪崩」と全層雪崩」に分けられますが融雪雪崩はそれらを起こす条件が融雪になるものを指すのです。

表層雪崩.png


春先に発生しやすい「全層雪崩」は斜面上の固くて重い雪が流れるように滑り落ち、樹木が少なく、勾配が35~45度の斜面で特に発生しやすいため注意が必要です。

自宅周辺の危険個所の把握や山間部に出かける時には、周囲の様子に注意するなどの被災防止に努めましょう。




参考文献および資料
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寒地土木研究所 雪崩に関する基礎情報


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地下空間の危険性と「駅ナカ」を考える [建築物]

様々な災害を想定したリスク回避策は急務


益々広がる地下空間、地下40m下に進む開発、しかし、地下にはいまだ分からない部分もあると云うのですが、調布市の市道陥没事故は大きな問題を提起し、今だに市道や住居の地下部に大きな空間が発見されているのです。

調布市の場合には、東京外かく環状道路の地下トンネルルート上にある市道が陥没したわけですが、地下空洞について東日本高速道路(NEXCO東日本)の有識者委員会は「トンネルを掘るシールド工事が要因の一つ」とする中間報告をまとめました。

調布市の陥没事故.png


中間報告ではトンネルを掘っている地下約47mの深さに、小さな石の割合が高くシールドマシン(大型掘削機)で取り込みにくい地盤があると確認しています。

夜間の工事休止後にマシンのカッターが回転しなった為、動きやすいように地中に気泡を注入したところ掘削断面が緩み、トンネル上の土砂が落ち込んだと推定したのです。


NEXCO東日本では「陥没などのメカニズムが判明するまでは外環道のシールド工事は止める」との判断を示しましたが、地表から40m以上深い地下空間は2001年施行の大深度地下使用法により首都圏、中部圏、近畿圏の一部区域を対象に、公共目的の事業に使用が認められるようになりました。

大深度地下空間においては用地の買収は不要であり、東京外かく環状道路(外環道)やJR東海が進めるリニア中央新幹線など4件が認可されています。


リニア工事では、21年度初めに北品川非常口(東京都品川区)からシールドマシンが発信し、都内の大深度工事が始まる予定になっています。

リニア工事北品川首都圏第一トンネル.jpg


地盤工学の専門である芝浦工業大学・稲積真哉教授は東京新聞紙上で河川に近い地盤の砂などに含まれる地下水がシールドマシンの振動で分流して流れ出し、陥没や空洞が出来る現象は珍しくない「こうした現象は大深度でも起きる、リニアのトンネルも多摩川や中小河川の流れる地域を掘る。ボーリング調査の数を増やし、地中をレーダ探査するなど、事前に対策を考える必要がある」と解説しています。




地下空間とそのリスク

都市は年々その姿を変えてきていますが、特に地下空間の活用には著しいものが有ります。しかし、この地下空間において地震などの大災害に遭遇した場合の対策は、実はまだ決して十分であるとは言えないのです。

これから述べるのは、地下鉄と駅ナカなど地下にある商業エリアを巡る問題ですが、一番の問題は地下空間の危険性が知られていない事と、発展のスピードが速く、規制が後追いになってしまっていると云う事なのです。


地下空間にいる人の数は飛躍的に増えており、様々な災害を想定したリスク回避策は急務の対策と云えるでしょう。

大深度地下鉄.png


東京の地下鉄駅の場合、新しい線は古い線の下を通るために駅はどんどん深い所に造られる事になり、駅舎も次第に深い所に造られるようになり深い駅では地下40mを超える所にあるのです

もし、駅舎ではなく、地下鉄車内で災害に遭遇した場合を考えてみると、切迫して車外に出ようとした場合、緊急のドアの開閉装置はどこにあるのだろうか?実は地下鉄は車両によってバラバラで、まして今は地下鉄と私鉄との相互乘り合いが有るためさらに複雑化しており、分かりづらいのです。


このように地下鉄は地上車両も地下を走る、さらに車両によっても異なるなど緊急時への対応が標準化されていないと云う事から考えて行かなければなりません。

そして、一番懸念されている車両への送電線が線路近くに設置されているのは2路線(丸ノ内線・銀座線)ですが、あとの路線は地上軌道のように上から受電していますが、このような知識も共有はされていなのが現実です。




大深度地下は安全である?

地下は揺れが少ないと云う「安心神話」は信用が出来るのか?実はそのように考える人が多いのは確かですが、其れは地上と同じ強度の建築物であれば正しいのかも知れません。

しかし、揺れが小さいならそれらに応じて構造設計されるのが普通であるため、一概に地上より安全であるとは言い難いものがあります。


地下空間で怖いと考えられているのが、主に次のような事ではないでしょうか。

① 地震による構造的破壊で外に出られなくなるのではないか。

② 火災時は凄い煙で逃げ出せないのではないか。

③ 窓がないのため爆発が起これば一瞬にして炎に包まれるのではないか。

④ 水が流れ込んできたら水没してしまうのではないか。

また、「暗黒の空間に閉じ込められたら」という心理的な恐怖に対する配慮はどうなっているのだろうか、この問題は「度合いが高ければ高い程設計の安全レベルを上げる必要がある」というのが結論です。


防災上の課題として残っているのは、地下空間の使い方やその危険について、利用者・従業員にしっかりと理解させる工夫が殆ど行われていないことです。

危険な理由がどこにあり、どんな使い方をすると危険が起きるのか、また、安全のためにはどんな仕組みが用意されているのかの知識を持ち、それをどのように説明して理解して貰うかについて学習しておくことが求められます。




駅ナカの防災対策

一般的に言われている「駅ナカ」ですが、鉄道事業者が駅構内に展開する商業スペースの通称(従来はJRの用語であったが他の鉄道会社の類似スペースも同様に呼ばれるようになった)で、地上から地下までもそう呼ばれるなってきています。

ターミナル駅では近隣の商業施設と複合化しているなど、従来の駅としての機能は様変わりして来ている

駅ナカ.jpg


従来、駅舎は交通手段を利用するための場所として位置づけられているため、人が滞留する場所ではないとされています。

消防法では改札口の内側にはスプリンクラーの設置を義務付けていませんが、ターミナルビルは「複合用途防火対象物」にあたるため、スプリンクラーの設置は義務付けられています。


その結果、大きなターミナルビルの駅ナカはスプリンクラーは必要ですが、小さな駅の駅ナカには義務化されていない所が多く、また、コンコースやプラットホームは不要となっています。

地下であれば、一般商業施設と同様の避難、誘導の問題が有り、乗降客への対応と共に混乱の危険性が存在していると云っても過言ではないでしょう。






参考文献および資料
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特定地域の水害に自衛隊派遣の対処計画 [風水害]

東京都東部5区の水害時に自衛隊が迅速出動



私達の生活を脅かす自然災害の最先端で、消防、警察共に救助活動を行っている自衛隊ですが、自治体からの派遣要請が出てから迅速な救援活動のために事前の活動が不可欠だと云うのです。

1月19日に防衛相が新たな指針として、東京都東部の江東5区(江戸川、足立、葛飾、江東、墨田)の水害を想定し、自衛隊の災害派遣に関する対処計画の策定に着手したと発表しました。


この地域では、荒川と江戸川などが同時に氾濫すれば最大250万人の避難が必要とされており、対処計画には、自衛隊が災害派遣される際の ① 派遣元や部隊の配置② 活動拠点となる自衛隊基地③ 物資の集積場所・・・などを明記し、台風シーズン前の6月頃までに概要を取り纏める方向だそうです。 

江東五区此処にいてはダメ.png



海抜0メートルが広がる江東5区では、人口約260万人が生活をしており、荒川、江戸川、墨田川などが縦横に流れ、5区が2018年に公表したハザードマップでは荒川と江戸川が同時に氾濫した場合、約100万人が暮らす江戸川区西部と江東区東部で2週間以上浸水が続くとし、水深最大10メートルに達する地域もある、言われています。

防衛省は5区での大規模水害時に浸水で孤立した住民の救出や避難支援、救援物資の運搬に自衛隊が当たることを想定しているそうです。




2019年10月の台風19号では決壊の恐れがあった

年々、災害規模が大型化していく台風などの自然災害、この台風19号では荒川の水位が急上昇し、決壊の恐れが高まったそうですが、最大250万人もの人を遠方に避難させる難しさが浮き彫りとなり、省内で「経験した事の無い規模の救援活動が必要となる。計画が無ければ対応できない」と、危機感が高まっているのです。

防衛省では現在、各自治体のハザードマップを基に、堤防の現地視察などで基礎データを収集しているそうです。

浸水前、浸水後.png


今後、被害想定や住民の避難先などについて国土交通省や内閣府、関係自治体との意見交換を進めており、都市での水害から住民を隣県などへ避難させる広域避難は移動手段の確報は自治体間の調整が必要で、他地域でも問題となっています。



浸水想定域では開発規制を

国土交通朱尾では、都市部の河川沿いでの浸水対策を促進する「特定都市河川浸水被害対策法」に「浸水被害防止区域(レッドゾーン)」を新設する方向でいます。

台風や線状降水帯が発生した時などに気象庁が呼び掛けている最大級の警告「大雨特別警報」、数十年に1度の降雨などで浸水が予想される地域を都道府県知事が同区域に指定したのです。

大雨特別警報.png


区域内に新設する住宅や高齢者施設などに対して、浸水に耐えられる構造を持つことや浸水想定より高い位置に居住空間を設定するなどの要件を課し、満たさない場合は建設を許可しないとしています。(既存の建物は対象外)

堂被害対策法の適用地域は現在、東京や大阪などの8水系64河川ですが、今後、適用地域を拡大し全国の都市部でレッドゾーンを指定可能としています


土砂災害や地滑り、津波については、住宅開発などを規制するレッドゾーンが既に導入されているそうですが、浸水は土砂災害などに比べて避難する時間がある事などから、レッドゾーンは今まで設けられていなかったのです。

2019年10月の台風19号などで河川氾濫が相次いだことで、国土交通省が導入を検討していました。





参考文献および資料
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